「僕は学校が嫌いです」

千葉エリア四街道東教室/佐倉臼井教室教室長の桑原と申します。

「僕は学校がキライです」
衝撃だった。彼が塾に入って2ヶ月くらいのころに起きたこの衝撃を未だに覚えている。
面と向かって私にそのようなことを言ってくる生徒は少なくない。ただ彼はなにか違った。「嫌いだ。」という言葉の重みが真剣に伝わってきた。
話を聞いてみると、クラスでうまくいっていないという。彼はコミュニケーションで困っているそうだが、私との間でコミュニケーションは取れていたし、込み入った話もできていた。なぜ彼がクラスでうまくいっていなかったのか、不思議で仕方なかった。
入塾時の成績は 5 教科 180 点。クラスでうまくいってないところから学校も休みがち。勉強は嫌い。学校の学習内容にも遅れている状況。精神的にはそこまで強いタイプではない。
こういう生徒は少なくない。どんな生徒にも悩みの一つ二つはあるものだ。
「学校やクラスを無理に好きになる必要はない。ただ学校を理由に『やるべきこと』から逃げてはいけない。君には君にあった付き合い方を好んでくれる友達がこれから出てくる。」彼はそこでホッとしたという。
「部活はどうなのかな。」
「楽器“は”好きです。」
「どういうところが好きなのかな。」
「音色が綺麗なところです」
「合奏はどうだい。」
「合奏は好きですけど」・・・・

彼とは音楽の話で意気投合した。譜面の読み方。指揮者ならどう考えるか。この曲はどういうところでどの楽器が良い味を出しているのか。吹奏楽部のあるあるなど。
私が所属する楽団のライブに来て「トロンボーンのピッチが揃ってないですね」「全体的に音程が合ってない」などとダメ出しをしてくるほどの音楽愛だ。
世の中の大人ならば子どもにそこまで指摘されたら「若いくせに生意気だ」と思うことだろう。しかし時として子どもはストイックな一面を見せることがある。大人の想像を超えることを考えていることはすくなくない。
趣味を嗜む者としての会話においては、年齢など考慮する必要はない。趣味の世界に遠慮など必要ないのだから堂々と批判したり良いところを言えばいい。私は彼に批判された時、素直に褒めた。
先日そんな彼の所属する吹奏楽部の演奏会があり、足を運んでみた。
千葉県のコンクールで金賞を取るだけの演奏は、さすがに聴きごたえがあるなぁと感心しているなか、ある曲の途中、彼は曲中に客席側に向かってたち、楽器を構えソロを吹いたのだ。
「情熱大陸」のメインメロディが終わり、曲も落ち着いていこうかというところ。彼のソロが1小節はやく割り込んでソロを吹き出した。
二拍三連符の裏から入ってくるソロの切り出しは見事。美しい。
滑らかで煌びやかなサックスのメロディがホール中に響き、聴くものを魅了した。ただ、原曲を予習していた私は、“あえて”譜面と違うソロを彼が吹いていることに気がつき、その独創的で熱のこもった“彼の唄”に思わず感動してしまった。
大抵の中学生の演奏者ならば、ソロを演奏するときは譜面に視線が行き、緊張した面持ちでなんとかソロを演奏し切ることに気が行くものであるが、彼の場合は違った。
譜面を見ず。不安な顔など見せず。「曲を楽しんでいる」ことが全身から伝わってきたのだ。

彼の入塾時の成績は学年でみて下の方であった。1年生の2学期前くらいから入塾し、今現在ではそこから100点アップした成績をキープしている。
最初はまずきっちり週3回塾に来るところから始めましょうという段階から始まった。1回の指導で1.5時間の課題量からスタートしてったのだが、だんだんと勉強に取り組める時間が増え、それに比例してこなせる課題量をふえていった。英単語の取り組み方、わからないことの調べ方、まず70点を取るためにすることなどなど。教えて伸ばしたというよりかはきっかけを与えたと言ったほうが適切です。重要視したのが「やるときはやる」「楽器の演奏技術の向上と勉強は似ている」という二点です。
生徒の「やるべきこと」への意識に触れて伸ばしていけるのが学習空間の最大のメリットであると考えているので、彼もそこをみっちり指導させてもらっています。

そして中3のいまでは1回3時間としっかり取り組むことができるようになってきた。先日行われた夏期講習では休憩を挟みつつ5時間ほどできるようになった。あとは結果をついて来させるところである。
「我慢すること」を覚えたのだ。成績的には決して高いとは言えないだろうが、数字では表せない彼の成長をここに記しておきたい。もちろん学習塾である以上は成績アップを求めて行かねばならないが。
テストの点数が上がることは大切であるが、それと一緒に生徒の心の成長を捉えていくことも自習型の塾をやる以上重要であると考えている。

最後に、このような文章を書かせて頂くにあたって、何より心苦しいのが生徒の努力を比較して一人選別して紹介せねばならないということだ。生徒は塾に来て苦手な勉強を通じて自己と向き合っている。それだけで努力と呼べる訳で、成績が上がっているからといってその生徒だけを取り上げて「成功事例」として取り上げるのはフェアではないと思うのだ。両教室で約90人ほどの生徒と関わっているが、90人いれば90人の「成功事例」があるということだ。
「いいところがない人間などいない」が私のモットーだ。これからも大切にしていきたい。

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